Marco の本棚

~紙の削減~ 著作権切れの名著

1922-01-01から1年間の記事一覧

芥川龍之介『六の宮の姫君』

一 六の宮の姫君の父は、古い宮腹(みやばら)の生れだつた。が、時勢にも遅れ勝ちな、昔気質(むかしかたぎ)の人だつたから、官も兵部大輔(ひやうぶのたいふ)より昇らなかつた。姫君はさう云ふ父母(ちちはは)と一しよに、六の宮のほとりにある、木高(こだか)い…

菊池寛『頸縊り上人』

頸縊り上人 1922年 ( 大正11 ) 7月「改造」 小原の光明院に、寂眞法師と云ふ上人が住んでゐた。何某の大納言の叔父君に當つてゐる上、學問も秀れ、戒行も拙たなくなかつたから、あつぱれ上人やとて、歸服し奉る僧俗も、數少くはなかつた。 その頃の習ひとて…